随想手帖

時に真面目に、時にゆるく綴っております。ちなみにオタク(腐)です。

続・「マダムと泥棒」(1955年 イギリス制作)

日にちが空きましたが、映画「マダムと泥棒」の感想の続きです。ネタバレありますのでご注意下さい。

 

 

映画そのものの内容としてはアメリカのコメディと違い、ドタバタしていませんがブラックでシニカル、じわじわくるイギリスの笑いです。そして何よりお上品なんですよね。建物、インテリア、音楽、街並みなどがいかにも伝統的で格調高い。

 

下宿先の老婦人が泥棒達に「私の若かった頃、女王様がお亡くなりに・・・」と話すところがあるのですが、一瞬「今のイギリスの女王陛下?」と思ってしまったのですが、勿論ご存命ですので違います。公開されたのが1955年、おばあちゃんの年齢を70代としてそこから50年ほど遡ると1905年。この辺の時代で該当するイギリスの女王様といえばヴィクトリア女王なんですね。(というか、この老婦人の女優さんはリアルでヴィクトリア女王崩御を経験している世代かと) こういうふうに映像として見ていると何だか遠い時代のようで、近いような・・・不思議な感じがします。ちなみに夏目漱石ヴィクトリア女王の葬儀を見ているらしいので、この老婦人が若い頃、夏目漱石がイギリスに来ていたんですね。

 

面白かったシーンとしては、老婦人のお友達がわさわさやってきて、泥棒達の素性と行いがばれるところからの一連の遣り取り。泥棒達といえども年季の入ったおばあちゃん軍団には敵わず(笑)そしてお友達が帰った後、老婦人宅に警察がやってきてピンチ!になるのですが、どうにかこうにかしながら切り抜けます。泥棒達があたふたあたふたしながら、老婦人に警察へのやり過ごし方を教えたり、物陰に隠れたりする様子が笑えます。

 

その後、老婦人を誰が口封じのために始末するか・・・で仲間割れが勃発。泥棒達は根っからの悪ではなく、善良な老婦人を殺めることに対する躊躇いはあるわけです。そこからラストまで一気にブラックな展開となります。後のモンティパイソンの原型の一つと言って良いと思います。

マッチ棒でくじ引きをし、老婦人を殺す役を決めますが当たった元軍人のコートニー少佐とハリーは現金持って逃げだそうとする始末。元ボクサーの「ワンラウンド」ことローソンにいたっては老婦人の味方になってしまったり。(彼は最初から老婦人には優しかった)

少佐、ハリー、ワンラウンドはすったもんだあって死んでしまった後、証拠隠滅(?)として列車の上に落とされます。ここで列車の煙を使った演出がまた良い味出しています。仲間同士の殺し合いを描いているのにも関わらず、血も見せない、ドロドロさせない、それどころかどこかコミカルでシニカルな感じさえする、いかにもイギリス的です。

最後に残ったマーカス教授とルイも一騎打ちをした後、それぞれ命を落とします。この場面は夜から明け方にかけてなので、疲れた老婦人は眠ってしまっています。朝目覚めると、泥棒達はどこへやら・・・でも現金のみが残されている・・・という「棚から牡丹餅」的なオチで終わっています。この老婦人の場合だと、そんな変な使い方はせず寄付したりとか、オウムのために使ったりとかしそうですが。

 

この老婦人は、無邪気な善良さゆえに泥棒達を含む周りの人間を振り回してしまうタイプです。作中でも、果物売りの男性や馬の主も被害を受けています。確かに傍にいたら迷惑な部分もあるかも(笑)それでも、彼女が何事もなく日常に帰ってこられたのはやはり心が善良だったから・・・だと思うんですよね。

 

これが発端で私はイーリングコメディに興味を持って見るようになったのですが、日本でDVD化されているものは本国に比べるとやはり少ないです(涙)中高時代は英語が大嫌いでしたが、イギリスの映画やモンティパイソンに興味の湧いた今はもっと勉強しておけばよかった・・・というよりALTの先生と話しておけば・・・と後悔しております。