随想手帖

時に真面目に、時にゆるく綴っております。ちなみにオタク(腐)です。

「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」(2004年 アメリカ制作)

今まで見るのを渋っていましたが、昨日ついに見ました。ピーセラさんのファンでありながら、彼の伝記映画を見るのを躊躇っていたのは、「彼の良くないところが強調して描かれている」・・・という評判だったからです。

例えば、ザコンだとか女好きだとかワガママだとか・・・この映画を見たせいでピーセラさんのことを嫌いになってしまわないか・・・ということがとても不安だったのです(-_-;)

 

でもやっぱり、ファンとして見ねば!と思い立ちました。

内容としては、伝記映画ですのでピーター・セラーズという男の半生です。

 

 

・・・で、その感想。

 

ますますピーター・セラーズという俳優さんが好きになりました。というか惹かれました。

 

確かにこの映画ではピーセラさんのアレな一面を描いているシーンが多かったです。

変ですかね、私(苦笑)

 

でも、何だか・・・彼の性質である、ザコン・不健全な自己愛・幼児性・制御できない感情・・・というのがどうも他人ごとに思えなかったのですよ。

 

ウィキペディアによると、ピーセラさんは上にお兄さんがいたらしいのですが、その子は死産したみたいで・・・名前は「ピーター」。

ピーセラさん自身の本名は「リチャード・ヘンリー・セラーズ」。ピーセラさんは死んだお兄さんの名前で呼ばれてようです。その後、兄弟は生まれなかったようで一人っ子だったのでしょう。

でもって、両親ですが英語版ウィキペディアでみたところ、どうやらお母さんの方が8歳ぐらい年上のようで・・・亭主関白ならぬカカア天下だったのでしょうか。映画からもそのような印象を受けました。

上の子を亡くした母親の一粒種の息子・・・ピーセラさんのお母さんが息子命に、そして彼がマザコンになる要素は充分すぎるほどあったのですね。映画だと、ピーセラさんはお母さんのことを名前で呼んでおり、まるで恋人同士のよう。

自身に結婚して子供が出来ても、相変わらず「母の息子」でありました。

 

私自身も一人っ子で、支配的な母親の影響が強くて、ついこの間まで脱け出せていませんでした。母と息子のようにベタベタではありませんが、常に心の中に母親がいて私の思考・感情・価値観そのものになっている感じです。

私は何とか今はそこから先に進もうともがいているところですが、ピーセラさんはきっと一生脱け出せなかった人なんだろうなって・・・

 

奥さん・子供達にとっては、「良い夫・良い父親」では決してありませんでしたが、それでも彼なりに愛情があったのは伝わってきます。健全な自己愛を育めなかったから、奥さんや子供達に対して出来なかったんですよね・・・本当の意味で自分を愛せず、暴走する幼児性・感情を持て余している様子がかなり切なく、痛々しかったです。

 

実体がない・・・という個性から、色々な人間になりきってきたピーセラさん。でも、心の底から満足できる役にはなかなか巡り合えなかったようです。

そして、ようやく・・・ただ一つこれだけは・・・!という役に出会えました。

 

事実上の遺作と言われている「チャンス」(原題はBeing There 訳「そこにいるだけ」)です。

 

欲も汚れも知らない無垢な庭師が、周りに持ち上げられ最後には「大統領候補」にまでなる・・・というピンクパンサーのようなドタバタは一切なしの静かなコメディです。

この純真無垢で「ただそこにいるだけ」の庭師というのが、本当のピーセラさんそのものだったようです。

「チャンス」の後にももう一本出演しているようですが、ピンクパンサーの特典DVDでインタビューに応じた人が言っていました。「彼にとって本当に演じたかったのは「チャンス」だけで、それをやりきったから満足して逝ってしまったのだろう」と。

 

最後に近づくにつれ、涙がぽろぽろと落ちてきました。

この映画で彼の全てを語っているわけではないけれど、これがピーター・セラーズという俳優だったんだなと・・・

まさに「俳優になるために・・・そして、全ては「チャンス」を演じるために生まれてきた俳優」だったのでしょう。

彼自身は当たり役のクルーゾー警部が嫌いだったようですが、あの笑いの神に愛されたドタバタ警部も彼の「生」の一面だと思いますし、彼が演じた他のキャラすべてに言えることだと思います。

 

ジェイソン・アイザックス氏(ハリポタのルシウス・マルフォイ)、アラン・リックマン氏(同じくハリポタのスネイプ先生)など、今まで好きになったイギリスの俳優さんは何人かいますが、「惹かれて止まない」のはピーセラさんが初めてでした。(次に出会ったのが、モンティ・パイソングレアム・チャップマンです。彼はアルコール中毒を患い、その影響で若くして亡くなります。そんな波乱万丈の人生が、どこかピーセラさんと重なります)

 

ピーセラさんって、いわゆる正統派イケメン俳優とは違いますよね。映画冒頭で「ハンサムじゃないから役がもらえない」って言ってましたし・・・でも、私はピーセラさんの顔立ちが大好きで・・・あの垂れ目とかセクシーな感じがしませんか?(*^_^*)

 

そして、この映画の見所といえば・・・ピーセラさんを演じた、ジェフリー・ラッシュ氏!

彼もまた凄い俳優さんだと思います!

あの目はまさしくピーセラさんの目でしたし、ふとした横顔・表情・声は完全コピーです!

「本人連れてきたの?」「ピーセラさんの魂降臨してるんじゃないの?」って思ってしまうほどでした。

二番目の奥さん、ブリット・エクランドを演じた女優さんも本人?と見紛うほどそっくりで・・・他にも何人かそっくりさんがいて・・・もう何なんだこの映画(笑)

 

 

見る前はドキドキしていましが、ピーセラさんファンとして見て良かったと思える映画でした。

ザコンで、ワガママで、女好きで、気難しい・・・でも、ある意味とても繊細で愛せずにはいられない魅力を持っている・・・それがピーター・セラーズという男だったのだと思います。

 

 

★ 余談 ★

この映画では、ピーセラさんの負の部分がたくさん描かれていますが、モンティ・パイソンジョン・クリーズの自伝では「ピーターには何とも言えない闇があるようだ。でも、それを私達(著者のジョンとおそらくグレアム・チャップマン)には見せない。彼は常に親切だった」とあるので、面倒見のいいところもあったようです。