随想手帖

時に真面目に、時にゆるく綴っております。ちなみにオタク(腐)です。

「カインドハート」(1949年 イギリス制作)

イーリングスタジオのブラックコメディです。イギリスの名優、アレック・ギネスが一人八役をやったことでも有名。(主人公ではなく脇役の方)

 

 あらすじ

ある死刑囚が自らの回想録を綴りながら、今に至るまでの過去を回想していく形でストーリーが始まる。死刑囚の名はルイ・マッツィーニ。彼はイギリス貴族の母とイタリア歌手の父を持つハーフ。両親は駆け落ちをするが、父は妻と幼い息子を残して亡くなる。生活の苦しくなった母は実家のダスコイン公爵家を頼ろうとするも、けんもほろろに断られる。母はルイにダスコイン家のことを教えていく。家系図、女子でも爵位を相続できること・・・ある日、母は事故が元で息を引き取ってしまう。ルイは母に冷たくしたダスコイン家への復讐を決意、そして公爵の地位を我が物にしようと画策する・・・

 

 

野心家の青年、彼を取り巻く二人の女性・・・ということからスタンダールの『赤と黒を思い出しました。

 

主人公のルイ青年も野心家で策略家・・・なかなかのワルです。彼のお母さんも苦しい身の上ながらも芯は強い女性でした。これはもう、筋金入りの貴族同士の地位を賭けた争いだな・・・と感じました。

 

本作にはヒロインが二人出てきます。

ルイの幼馴染のシベラと、ダスコイン家の未亡人イディス

 

好きな方にはごめんなさいですが、シベラが終始うざかったですね~!(^_^;)

 

彼女は典型的な「男に好かれて、女に嫌われる女」だと思います。ルイはどうしてこんな女に惚れたのか・・・ルイのやっていることも結構外道なのに、シベラのうざさの方に目が行ってしまい、「ルイ、こんな奴の誘惑に負けちゃダメだ~!」と変な応援をしていました(苦笑)うーん、男性はやっぱりこういうタイプの女性に惹かれるものですかね。

 

一方、ルイの策略により夫を失った貴婦人イディス。

彼女は凛としていて、品のある女性でとても好感が持てましたね~(*^_^*)

夫の飲酒癖を堅く咎めながらも、ちゃんと彼を愛していて・・・ルイが結婚を申し込んだ時も一度は断るし。ルイが裁判にかけられた時も、彼を信じて待つし・・・

 

最後、無実となり出所したルイに二人がそれぞれ迎えに来ます。

いや、もうこれね・・・女の目で言ったらイディス一択ですよ。悩むまでもないです(断言)

ちなみに映画はルイの一人勝ちという終わりではありません。この辺りがまさにイギリス的なので・・・気になる方は見てみて下さい。

 

・・・で、一人でダスコイン家の八役をやったアレック・ギネス

この時まだ30代半ばぐらいのはず・・・なのに、老け役も見事にこなしています!さすが、ピーセラさんが憧れた名優!

ダスコイン家は皆嫌な奴なのかと思いきや、ルイに親切な人も割といて・・・殺されてしまうのが可哀想になってくるところも。カメラオタクのヘンリーとか、牧師さんとか。

一番笑ってしまったのが、アガサという女性役。彼女はフェミニストで女性の参政権を求めて街を破壊して、警察にマークされている人物です。

その一連のシーン・・・まんまノリがモンティ・パイソンです!彼等の演じるおばちゃん(ペッパーポット)はここからもヒントを得ているのでしょうか。多分、あると思う。アガサは気球に乗ってビラをまいている最中に、ルイの放った弓矢で撃たれます。これはもうコメディというか・・・ギャグだよね(笑)

 

他にも裁判のシーンとか、公爵の狩猟シーンとか・・・イギリスの社会が垣間見えるのが勉強になりましたね~。モンティ・パイソンのスケッチでもたくさん出てくるので。

あと、非常に細かいところなんですが・・・ライオネル(シベラの夫)とルイが二人で会話している部屋に、日本画が飾ってあったんです!ぼやけていますが、江戸時代風の髪型をした女性が描かれていたのであれは間違いなく日本画かと。地味だけどなんか嬉しかった(*^。^*)

 

主人公のルイを演じたのはデニス・プライスという俳優さんです。

1957年のイギリスのコメディ「赤裸々な事実」という映画で、ピーセラさんと共演しています!こちらの映画でもかなりの外道な役を演じています(笑)

 

シベラ役のジョーン・グリーンウッドという女優さんは、同じくイーリング映画の「白服の男」でギネスと共演しています。こちらの作品でもヒロインを演じていますが、好感のもてる女性でした。

 

余談ですが・・・アレック・ギネスには息子さんが一人いて、生まれた年が1940年なんです。そして、パイソンズの生年は1939年~1943年。つまり、ギネスの息子さんとパイソンズは同年代。

パイソンズも子供の頃、父親と同じぐらいの年齢のギネスが出ている映画を見ていたのかなって・・・

ジョン・クリーズは自伝で「イーリング映画を見ていた、『ラベンダー・ヒル・モブ』が好きだった」と述べています。

テリー・ギリアムは『マダムと泥棒』のDVDの特典映像で解説役の一人として出ているので、他のイーリングも見ている可能性大。

自分が見ている映画を、パイソンズも見たんだ・・・と思うとなんだか嬉しいんですね。ささやかながら接点を持つことが出来て。